鷹見明彦(美術評論家)企画展

保科豊巳
 「炎上する記憶」


2008.11.4-15

会場:表参道画廊 






 閉じた窓ガラスの向こうの闇に炎上していく家を映した映像がみえる。火が照らす闇にひびく燃焼音に包まれていると、部屋自体が燃えているような体感を覚える。・・・雨樋を天井にはわせた別な部屋の真ん中には、コンクリートの井戸があり、近づいて覗き込むと底にはこちらを見つめるフクロウの映像が光っている。・・・吹き抜けの地下空間のガラス面に付着した小スピーカーによって充満する烏の鳴き声に、神霊の使いであった八咫烏(やたからす)を幻視する。・・・丘の地象を仮構した構造体のスロープを登りきると、水流が上下反転した滝の映像に対面する。・・・身体と場所との関係性に再帰する保科豊巳の近作は、日常の空間や現実の界面にも存在する意識下への導線が施設されている。そこには子どものころ、裏庭の祠(ほこら)のなかに真昼の星を見たという柳田国男の回想譚や鏡の国のアリスの世界とつながる遍路が見え隠れしている。
                     鷹見明彦(美術評論家)







□保科豊巳

1953 長野県に生まれる
1984 東京芸術大学絵画科大学院博士課程修了
1997~東京芸術大学美術学部准教授

□主な展覧会

1982 第12回パリ・ビエンナーレ(パリ市立近代美術館、フランス)
1983日本の現代美術展
        (スイス国立歴史博物館・ラス美術館、ジュネーブ)
1987 第3回モーベイジュ国際彫刻展〈買い上げ賞受賞〉(フランス)
1989 地・間・余白 今日の表現から(埼玉県立近代美術館、埼玉)
        (横浜アートギャラリー、神奈川)
1990 「Installaties」Het  Appolohuis(アイントフォーヘン、オランダ)
1992 結いの高欄道プロジェクト(長野)「間の記憶」展
1994 チバ・アートナウ(佐倉市立美術館)
1996 介在する表現・紙(山梨県立美術館、甲府)
1997 日本現代美術展(国立現代美術館、ソウル)
1998 環太平洋現代美術展(福建州市立美術館、中国)
1999 日独交流現代美術展(デュッセルドルフ市立美術館、ドイツ)
2002 第10回ランタン・オブ・ザ・イースト・エイペックス・インL.A
   (ドイザキギャラリー、日米文化社会センター、カリフォルニア州立
    ロスアンゼルスギャラリー、エンジェルスゲート文化センター)
2003 第2回「大地の芸術祭」妻有トリエンナーレ展(新潟)
2005「VOICE OF SITE」ニューヨーク展、SVAギャラリー ニューヨーク、U.S.A
   第2回成都ビエンナーレ、『景観と天堂と世紀』成都、中国
2006 SUICH展、慶応大学往来舎
   サスティナブルアート展、言の聞え、
   個展、毛利画廊、表参道画廊、 
2007 サスティナブル・アート『言の場』展,岩崎邸.東京
   伝統と現代展「墨単色の世界」旧坂本小学校。東京
   「日没から展」東御市芸術公園、ドクメンタ展、来往舎

 







 保科豊巳
「炎上する記憶」 2007
 



2007年制作の『炎上する記憶』は私の子どもの頃の忌まわしい火災の事件の体験から
発想されている。この作品を表参道画廊用にアレンジします。炎は幼い彼にとって美しく
魅了された完全な美であった。全てを焼き尽くしてほしいとさえ思った。その出来事のあ
った場所に当時の実在した藁置き小屋と全くそっくりに、しかし1メートルくらいの高さ
に縮小して再生してその頃の記憶をもとにした周囲の風景も再現した現場を制作した、そ
してその小屋を炎上させた。

展示会場では撮影された2つの映像をプロジェクターで映写し、小屋の燃える音量を流す、
まるでその炎上する小屋の中に閉じ込められたような体感に立ち会う。書で書かれた6幅
の作品を中庭にガラス面に貼る書には幼い頃の記憶の文章が荒々しい筆勢で書き込まれて
いる。