EXPOSITION TODAY










この秋も、美術評論家の故 鷹見明彦氏の企画展作家さんのその後をお伝えする画廊企画展を開催致しま す。今回は、2003年に弊廊で文庫本に刺繍を施した作品 を展示した福田尚代の新作個展です。小出由紀子事務所のご協力を得て、美 術館での発表の多い福田作品を身近に鑑賞頂ける貴重な機会となります。


 

福田 尚代 
山のあなたの雲と幽霊
 

2018. 10. 15 - 27  ・日休 




 山のあなたの雲 と幽霊

 本展では、《袖の涙》シリーズの新作を発表いたします。

 《袖の涙》シリーズは、古くから和歌に詠まれてきたような、涙が沁み込み、ときに朽ちてゆく〈袖〉と いう媒体への共鳴から生まれました。(※)
 拡張した身体であり、此岸と彼岸の境界でもある袖に触れつづける行為は、死者と遺された者との関わり に知覚をはたらかせる時間であったとも思われます。
 新作では、幽霊という領域に一歩踏み込みました。衣類の袖を綿状にほぐすなかで、袖の涙から雲へ、雲 から幽霊へと、修辞上の飛躍を彫刻的な手法で一息に体感することとなり、身体感覚に潜む無意識のゆくえ に驚いています。
 日々の生活では幽霊を信じていないにもかかわらず、制作に没頭する別の空間では圧倒的に存在してしま う、そんな美術の術についても、あらためて考えさせられます。
 また、子供の頃に、遊戯や読書に親しみながら夢想していた〈アズキと幽霊〉〈ソラマメと虚構〉をめぐ る物語も、ようやくささやかなかたちになろうとしています。ご高覧いただければ幸いです。

 展覧会タイトルに含まれる〈山のあなた〉は、カール・ブッセの詩から引いています。幼い頃、この言葉 を誤読したことにより〈彼方〉と〈貴方〉が混ざりあい、山のように遠く巨大でありながらも実体のつかめ ない、謎めいた存在と出逢ったのです。言葉の不思議さを味わわせてくれたこの響きには、あなたとわたし となにものかが互いに乗り移り、遠大と極小が入れ子となった幽谷が見えないでしょうか。



(※)同シリーズには、袖に見立てたハンカチにオイルパステルを塗り込めた《袖の涙、あ るいは塵をふり つもらせるための場所》、古いハンカチを用いて小さな袖を縫う《袖の涙》等があり、 「Reflection:返礼―榎倉康二へ」展(2015年)にて展示されました。

     2018年8月 福田尚代(美術家)



□ 福田尚代(ふくだ なおよ) 

美術家
埼玉県浦和市生まれ 

東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了 


主な展覧会に、2010年「アーティスト・ファイル2010ー現代の作家たち」国立新 美術館、2013年「福田尚代 慈雨 百合 粒子」小出由紀子事務所、2014年「MOTアニュアル2014 フラグメント」東京都現代美術館、2015年「Reflection:返礼―榎倉康二 へ」秋山画廊・スペース23℃、2016年「福田尚代―言葉の在り 処、その存在」うらわ美術館、など。
著書に、『福田尚代作品集2001-2013 慈雨百合粒子』(小出由紀子事務所、2014年)『ひかり埃のきみ 美術と回文』(平凡社、2016年)など。





























EXPOSITION FUTURE

































きたずみ きよこ 展 

  わたしは◯宇宙について◯かんがえた

 No.8 -Who are you?-


 2018. 10. 29  -  11. 3 



 今回の作品は、「禅の公 案」のようなものです。登場する「うさぎの答え」を楽しんでください。
 本シリーズは、普段見過ごし てしまいそうな日常の中に、科学的には解明されていないような「宇宙の
 秘密」を探す作品です。 MUSEE Fでは、来場者にも参加していただけたらと思います。
 


1980年に田村画廊で初個展。以来数年ごとに個展、グ ループ展に参加。アメリカやイギリスで
 シュタイナーカレッジやトビアスカレッジで藝術治療につ いての研修も受けている。
































藤本 なほ子 

 

読まれうる もの 
things that might be read


 2018. 11.5 - 17・日休 



本作品「読まれうるもの」は、親しい友人や家族の話を録音し、文字に起こして書きとった紙から 構成されます。
用いる媒体は「紙」と「文字」ではありますが、文字はすべて左右逆像で、(利き手ではない)左 手で書いたもの、目を閉じて書いたものもあります。そのため、意味を読みとることは、私自身に もほとんどできません(※1)。
紙の上には、友人の旅の話や、年配の女性が語ってくれた戦後しばらくの日々の話、家族との会話 などが記録されているはずです。しかし、作品はその内容をほとんど伝えません。

ことばは、何よりもまず「わかる」ため、共有されるためのものであり、その言語を解する人に向 けて生みだされます。
ことばが使われる場では、潜在的に、あるいは意識的に、「わかる」状態が前提され、あるいはめ ざされて、「わからない」状態はなるべく減じることが指向されます。

でもそもそも、私はなぜ、発されたことばが「わかる」のでしょうか(※2)。
そこにある文字がすっと「読めて」しまうこと、そして、文字を見ている自分の思念がただちに、 文字という「モノ」を通過して──現に目に見えていながら、まるで透明であるかのように── 「意味」という抽象的な空間へと移ってしまうことは、考えてみれば不思議なことです。

今回の作品では、「わかる/わからない」の軸上で「わかる」ほうへと自動的に吸い寄せられてし まう、私たちの意識自体に焦点をあてたいと考えています。 私には、自分がつねに「わかる」側へと自然と身を移してしまうことによって、実は自分も一部は 確かにそこに属しているはずの、なにか分厚く重い層のような空間を、われ知らず回避しているよ うに感じられるのです。


※1  ここには、自分の書く文字が自分の延長物のようで、うまく距離をとって見ることができない、だから、なるべく「異物」にしたい、という意識も働いていま す。

※2 精神医学者の中井久夫は、私たちの言表を可能にしているのは、「われわれの世界をく まなく涵しているところの、言語を支持する透明な網構造(ネットワーク)」であると述べて います(中井久夫「統合失調症者の絵画と言語」より)。  
「読まれうるもの」は、喫茶室、駅、公園などで、見知らぬ人々の会話を読めない文字で書 きとりつづけた作品「スケッチ」が発端となっていますが、この作品は中井氏の「透明な網構 造」という比喩表現を念頭に置いています。

★作歴
2003年〜 映像と言語を用いたインスタレーション作品
2008年〜 他人の筆跡をトレースする作品
2015年 「語言素描 drawings of language」(「わからない言葉」をめぐる作品。中国・重慶 ” Organhaus” での滞在制作)














































I C O N A 
角井 功 ・ 典子


 2018. 11. 19 - 24 


 「迷路のような街の光と影、長年通い続けたヴェネチィアから多くのインスピレーショ ン を得て生み出
 されたオブジェとペインティング。ICONAは、偶像や記号化された イメージ、「イコン」を表すイタリア語です。」
   グラフィック・アートディレクター、デザイナーの角井 功と角井典子は、各々舞台美術、空間 
デザインなど幅広いクリエイションに関わり、都市型スローライフ「ヴェネツィア的生 活」にて
衣食住すべてをアートととらえるライフスタイルを提案している。今回のため に制作した角井功作品と角井典子は長年書き溜めた絵画をフィニッシュアップして初公開 する。


※ 表参道画廊と同時開催。
詳細は表参道画廊のサイトをご参照下さい。




































越智 波留香 

  「みずのと」

 2018. 11. 26 - 12.1 


 
「みずの と」は「水の音」で もあり「水の都」とも読めます。また、十干の「癸(みずのと)」とするならば、自身の大切な人の生没年でもあります。

  ここ数年雨や川に時間の流れを重ねて表現してきましたが、今回は宮沢賢治の「春と修羅」
   からとった水にまつわる部分と、古い科学の教科書の主に水の組成に関する部分のテキスト
   を用い、水をめぐる視点をあらたに深めたいと思いました。



東京都出身 東京学芸大学大学院修了
2005年 第3回トリエンナーレ豊橋星野眞吾賞展 (’08,’11)
2013年 24名の作家による〜今日の墨表現展
2016年 現代水墨画の旗手たち展  他個展多数
現在 横浜美術大学絵画コース専任助手